香りと記憶
ここ数年、アロマオイルやルームフレグランスをよく使うようになった。
もともと香水は好きで、今でも部屋に香水瓶が2,3個転がっているような状態だ。
柑橘系の香りが好きだったが、今はローズの香りが一番心が潤う。
味の好みだけでなく、香りの好みも年を経ると変わるらしい。
香りにまつわる記憶は強烈なようで、いくつか忘れられない物がある。
例えば、ニセアカシアの甘い香り。
私の通っていた中学校の周りは、ニセアカシアの木が群生していて、季節になるとアチラコチラが真っ白に染まっていた。
あれは何年生の時だったか。
私は、渡り廊下につながる階段に腰掛けていた。
ふいに突風が吹き抜けて、雪のような花吹雪と、ニセアカシアの甘い香りで周りがいっぱいになった。
新緑の緑と、舞い散る真っ白な花がとても鮮やかで、美しかった。
私が記憶する中で、最も鮮明で、美しい思い出だ。
他にも好きな花の香がある。
私を可愛がってくれた祖母の家の前に咲いていた、沈丁花。
小学校にあった、大きな金木犀。
割と強い香りのする花が好きなようだ。
今使っているシャンプーの香りは、昔買った香油の香りによく似ている。
確か20になったばかりの頃だったと思う。
外国産の香油を商っているお店で、一目惚れした綺麗な香油瓶とともに購入した。
薄いガラス細工で、とても気に入っていたのだが、割ってしまった。
ほんの短い間しか楽しめなかった香りだが、今でも覚えているのは、あの頃が私にとって充実した毎日だったからであろう。
今日も私は、部屋に香を振りまいて床につく。
今日見る夢が、華やかでありますように。